2014年05月

2014年05月09日

ゼロイチ

よく事業を立ち上げるときに、ゼロからイチをつくる(ゼロイチ)という表現をしますが、ゼロイチってのはつくづく大変だなと思います。

採用の面接とかでも、「新規事業やりたいっす」とか「新規立ち上げってやらせてもらえますか?」みたいな話はベンチャーあるあるだと思いますが、望ましくは「新規事業なんてクソ辛そうなのでやりたくないですが、やれと言われれば石にかじりついてでもやりますけど、正直不安ですね」というぐらいの発言ができる方がよほど「わかっている感」があって好感が持てるのではないでしょうか。少なくとも私はそう感じちゃいます。

でも、たまに、「ゼロイチが好きなんですよ」とか「ゼロイチが得意です」とか言う人もいて、これまで「ふーん」と思っていたのですが、最近はそれは「ウソ」なんじゃないかと思い始めました。いや、正確には、「勘違い」と言った方が的確かもしれません。

ゼロイチが得意ってのは百戦錬磨のシリアルアントレプレナーじゃない限り、ほぼあり得ないのではないでしょうか。いやもっと言うならばシリアルアントレプレナーでさえ、「いや、ぶっちゃけ運も大きいし、再現性あるか自信ないわ。まじで」ってのがホンネですという謙虚な人も多い気がします。実際に創業から一部上場企業まで10年以内に持って行った同世代の起業家はそんな話をしてました。

じゃあ、なぜゼロイチが好きとか、得意とかいう若い人がいるのかについて考察してみました。
ゼロイチが好きなのではなくて、ゼロが好きなだけな人も多そうだな、と気づきました。ゼロとは、(当たり前ですが)何もない状態、何の制約もない自由な状態でフリーにブレストできる状態。そりゃ、楽しいに決まっていますし、何も生み出す必要がない(=ゼロで留まっていられる猶予期間)限りは、ラクなだけです。そういう状態を「好きだ」と感じ、ゼロの先にある大変苦痛なイチに向かうプロセスも勝手に含めて「ゼロイチが好き」と言ってしまっているのではないか、と思うのです。

これは、(私たちも加担しているが)ビジコンやインターンあるあるで新規事業を立案せよ系の短期インターンのせいもあるかもしれません。結局、プランだけ考えておしまい!というあれを繰り返すと、それが仕事の疑似体験だと勘違いして実行面の大変な困難さを知らないでものを語る人が増えてしまうという話です。
※注)短期インターンが良くないとは思わず、まだまだ改善の余地がありますね、という前向きな視点で見ています。

個人において、(昔に比べたら経験を積んだ結果)ゼロイチが相対的に得意になりつつあるという状態はありうるとしても、基本的にゼロイチなるものは生来、困難で苦痛なプロセスであるので好きだとか得意だとか言うには憚かるべき代物なんだと思うのです。

創業から9年目にして新規のゼロイチ案件をいくつか抱えながら、そんな余計なことを思いました。

yutaslogan at 23:30コメント(0)トラックバック(0)  このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
Profile
伊藤 豊 スローガン株式会社 1977年11月に栃木県宇都宮市に生まれる。1996年私立開成高校卒業後、東京大学理科一類へ。文転し、文学部(行動文化学科心理学)卒業後、2000年に日本IBMに入社。システムエンジニア,関連会社にて新規ビジネス企画・プロダクトマネジャーを経て、本社のマーケティング部門にてプランニングワークに従事すると同時に、ベンチャー企業の設立に携わり、マーケティング、ウェブ系プロモーションを主に担当した後、スローガンを設立。現在に至る。 「人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける」 スローガンGoodfindFacebookTwitterLinkedIn