2010年04月10日

親のために就職先を選ぶ間違い

この時期になると、就職活動生にとって、ぼちぼち内定も出始めていて、入る会社をどうしようかと悩み始める時期だと思います。ベンチャー企業や中小規模のマイナーな会社だけど、若いうちから裁量もって活躍できそうな成長しそうな会社にわくわくする自分と、やっぱり最初はブランドのある大企業に入る方が良いのではないか?親も周囲の友達もその方が称賛してくれるし、と思い始める自分。2つの自分の間で葛藤があったり、悩んだりするでしょう。

悩むのは当然なので良いのですが、一般論に流されることなく、自分の頭でしっかりと考えてほしいと思います。

ベンチャーや無名の会社に行くことにはメリットもあれば、当然リスクもある。でも、ブランド大企業に行くことにも、メリットもリスクも存在する。多くの場合、ベンチャーに行くリスクが過大評価され、大企業にいくリスクが過小評価される傾向にあります。大企業にいくメリットも過大評価されています。そうしたバイアスを取り除いて思考する知性と情報をまずは装備する必要があります。

大企業にいくメリットの過大評価とリスクの過小評価
ベンチャーにくメリットの過小評価とリスクの過大評価


この点については、また別途エントリーを書きたいと思います。


◆◇◆

さて、前置きが長くなりましたが、今日の本題ですが、毎年、学生と話をしていて、一番やめてほしいと思うことがあります。それは「親を悲しませたくないので有名大企業に行きます」という話。

親にお世話になったから親を悲しませたくないという気持ちは立派ですし、人として当たり前のことなので、文句ありません。しかし、「親孝行=親の言うとおりにすること」ではないと思うのです。

仮に、親の言うとおりに大企業に入ったものの、あまり楽しそうに仕事をしていない、自分がいきいきと人生を生きていないとしたら、そんな子供の姿を見て、親は喜ぶでしょうか?あるいは、山一証券や長銀、最近ではJALのように倒産した場合に親は喜ぶでしょうか?

それよりも、自分の人生をいきいきと後悔なく生きてほしい、というのが親の気持ちではないでしょうか。別に大企業に入ってほしいと思っているわけではないでしょう。いきいきと自分の人生を物心両面において豊かに生きてほしいと願っているだけではないでしょうか。大企業が経済成長をけん引した戦後50年を生きた親世代は古い価値観でのバイアスがかかってしまっているため、その結論が、大企業での人生だと思ってしまっているから、大企業を勧めているだけなのです。

子供に託された親への責任は、自分の人生を主体的に後悔なく生きることです。もし、ベンチャーや無名の会社での仕事にわくわくする自分がいるのであれば、そちらに挑戦すべきでしょう。

でも、実際、親の反対を押し切って、ベンチャーや無名の小規模の会社に入った場合、親は悲しみます。でも、一瞬だけです。

すぐに、親は、わが子が選んだ選択を正当化しようと、好意的な情報を選択的に取得し始めます。

たとえば、「たしかにその方が良いかもね。JALもつぶれる時代だし」とか。「大企業のブランドに依存して生きるよりも、個人として力をつけてたくましくなる方が安定だよな」とか。「そういえば、お父さんが若いころはソニーも本田も今ほど有名ではなかったし、今のソニーに入るよりも将来のソニーになるような会社に入った方が良いな。お前はなかなか良い会社を見つけたな。将来が楽しみだ」とか。

人間なんて、そんなもんです。これらの心理現象を心理学では、認知的不協和の解消といいます。


◆◇◆

最後に、実際に私が起業した際のエピソードも紹介します。

大企業を辞めて、裸一貫で起業してしまった私を見て(事後報告でした汗)、父も母も悲しそうな顔をして「なに?辞めてしまったのか・・・」と言いました。

その後、私がなぜ辞めて、ベンチャーをやろうとしているのかを説明したところ、最初はなかなかわかってもらえなかったものの、2時間後には、母親は「まあ、自分の一度きりの人生だから納得いくように生きるのが一番ね。体に気をつけてね」と言い、父親にいたっては「実はおれも昔、お前みたいに起業したいと思っていたんだ。おれの夢をかなえてくれてありがとう。がんばれよ」と言ってくれました。

大企業かベンチャーかで迷っている段階では、大企業に行きなさい!という親も、いざ本人がベンチャーを選んだ段階では、その選択を正当化するような情報を選択的に取得し、考えを変えていくものなのです。


だから、自分は本当はベンチャーや新しいことをやりたいと思っている人であれば、親が反対するとか親を悲しませたくないから大企業に行きます、というのは、やめてほしいのだ。


yutaslogan at 19:53コメント(3)トラックバック(0) 

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コメント一覧

1. Posted by 神馬   2010年04月10日 21:15
>すぐに、親は、わが子が選んだ選択を正当化しようと、好意的な情報を選択的に取得し始めます。

この一節で伊藤さんはやはり天才だと確信しました。笑
何気心理学のバックグラウンドをいかされている点も、新鮮でした。
今、@hhassyさんの講演にいってきたのですが、パートナーシップ•マネジメント(組織のありかた)を切り口とした話で、最近考えてたこととリンクしたこともあり、自分は大学で組織をテーマに追及していくつもりなうです。

何故か近況報告が入りましたが、次回お会いできる時を楽しみにしております。
2. Posted by 新卒君   2010年04月11日 00:00
なるほど。

伊藤社長や本物のベンチャーの方々から見たら全然ベンチャーじゃないかもしれませんが、僕もネット通販のR社に行くことになったら、初めは親、ちょっと悲しそうでしたもんね。。。やっぱり古くからの有名企業に行ってほしかったんだと思います。僕も当時はかな〜り気にしてました。

だからもっとほんもののベンチャーに行くとなると、親御さんが心配するのは目に見えますよね。

でも今では、僕が説得した部分もあるし、時間がたったのもあるし、かなりポジティブに捉えてくれています。全然、いらない心配だったと思います。
3. Posted by いとう   2010年04月21日 00:24
神馬さん
コメントありがとうございます!いろいろと経験し、興味範囲を広げているようですね。是非、またお話できるのを楽しみにしています。

Shirajiさん
実体験でのサポートありがとうございます。あとになって考えれば、みんな過去の選択を正しかったものとして正当化していくし、ポジティブな側面にちゃんと光をあてて見られるものです。
立ち位置が変わると、景色が変わるということでしょう。

世界的にみれば、まだまだR社もベンチャーだと思いますし、世界進出・拡大に向けて頑張ってください。

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Profile
伊藤 豊 スローガン株式会社 1977年11月に栃木県宇都宮市に生まれる。1996年私立開成高校卒業後、東京大学理科一類へ。文転し、文学部(行動文化学科心理学)卒業後、2000年に日本IBMに入社。システムエンジニア,関連会社にて新規ビジネス企画・プロダクトマネジャーを経て、本社のマーケティング部門にてプランニングワークに従事すると同時に、ベンチャー企業の設立に携わり、マーケティング、ウェブ系プロモーションを主に担当した後、スローガンを設立。現在に至る。 「人の可能性を引き出し、才能を最適に配置することで新産業を創出し続ける」をミッションに、人を軸にした新産業創出エコシステムをつくる活動に注力中。 スローガンGoodfindFacebookTwitterLinkedIn