2010年08月27日

PayPalマフィアをさらにディープダイブしてみた

先日のブログ記事「ブランド企業に就職すると良いという誤解」について、件の予備校プログラム監修者の佐藤純さん(@j_sato)がブログ記事を書いてくれているの発見しました。ケンカ売るようなタイミング(笑)で書いた私の記事に丁寧に反応してくれた寛容なご対応に感謝です。


「就職先選びがブランド志向なのは当たり前」: これは価値観とは別の話(株式会社フルライフの社長ブログへのリンク)

PayPalマフィアについての記述について補足してくれています。とても丁寧な分析ありがとうございます。

PayPalマフィアって言っても、彼らの初職は、7名のサンプル中、コンサル3名、大企業2名、起業経験者1名で、もともとPayPalは1名のみだぜ、というご指摘ですね。

たしかにその通りですが、大企業2名ってのはちょっと違うかと。あと、起業経験者ってのも、括りとしては、初職=スタートアップという括りが適切かと思います。

各人について私の補足分析は下記のとおり。
______________________________________

Reid Hoffmanは初職アップルですが、90年前後のアップルを大企業(ブランド企業)と言って良いのか微妙ではないでしょうか?当時売りに出されるなど業績的にはずっと不振だったはずです。

Elon Muskは、ネイティブな起業家で、もとから初職がスタートアップで連続して起業を成功させるシリアルアントレプレナーですね。

Roelof Bothaは、初職は南アフリカのMckinseyですね。2年も経たずにやめてスタンフォードMBA、その後PayPalですね。

David Sacksはたしかに初職Mckinseyですが、1年も在籍せずに、PayPalの創業に参画しています。

Premal Shahは初職がMercerですが、1年半しか在籍せず、その後PayPalです。

Chad Hurleyは初職PayPal。

Jeremy Stoppelmanは初職がExcite@Homeという当時設立直後のスタートアップだったはず。6か月だけ働いて、スタートアップのPayPalにジョイン。
______________________________________

紹介されている7名についてのより正確なサマリーは、

コンサル3名(全員2年未満退職)、上場ベンチャー(アップル)1名、スタートアップ系3名(うち1名共同創業、1名 PayPal)

となりますね。


◆拡大版:PayPalマフィアの初職分析

実は、他にも重要なPayPalマフィアの主要メンバーがいまして、その人たちの中には初職PayPalという人が何名もいます。

(以下のとおり)
______________________________________

Max Levchin(Slide創業)の初職:スタートアップ(共同創業)
http://en.wikipedia.org/wiki/Max_Levchin

Steve Chen(YouTube創業)の初職:スタートアップ(PayPal)
http://en.wikipedia.org/wiki/Steve_Chen_(YouTube)

Jawed Karim(YouTube創業)の初職:スタートアップ(PayPal)
http://en.wikipedia.org/wiki/Jawed_Karim

Russel Simmons(Yelp創業)の初職:スタートアップ(PayPal)
http://www.yelp.com/management

Daniel Issen(AdBriteのVP)の初職:スタートアップ(PayPal)
http://www.crunchbase.com/person/daniel-issen

Jared Kopf(Adroll他創業)の初職:スタートアップ(共同創業)
http://www.linkedin.com/in/jaredkopf

Dave McClure(投資家)の初職:独立ITコンサルタント
http://www.linkedin.com/in/davemcclure

Keith Rabois(数々の企業の経営陣):Law Clerk(法務書記?)
http://www.linkedin.com/in/keith
______________________________________

私が追加した8名を加えて、15名の主要サンプルを分析すると、

コンサル3名(全員2年未満退職)、上場ベンチャー(アップル)1名、スタートアップ系9名(うち3名が共同創業、5名がPayPal、1名が別のベンチャー)、その他2名(独立コンサル、法律事務所)

となりました。

ということで、初職もスタートアップが多いということです。

(サンプルの取り方次第でどうでもなるじゃん?という指摘はあるかと思いますが、今回の15名でかなり主要どころ網羅してるはず
参照URL:PayPal Mafia(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/PayPal_Mafia


◆注目すべきは、初職が伝統的な大企業という人が皆無である点

伝統的な大企業を初職で選ぶ人は皆無であるという点が私としては注目すべき点かと思います。

私が主張したいのは、最初にブランド企業、有名企業に入らなくても、というかむしろ伝統的な大企業に入らない方が、若くして経営人材としてタレント化する可能性が高いのでは?という指摘です。

若くして起業家や経営人材になるには、初職がスタートアップまたはコンサルファームが良さそう、というのがこのPayPalマフィアの経歴分析から導かれる仮説ではないでしょうか。



◆コンサルファームが良い理由

上記PayPalマフィアの何名かの初職がコンサルである点は納得できます。MckやMercerなどのコンサルは、終身雇用ではなく、Up or Outのカルチャーで大部分の新卒ジュニアポジションの人たちは2年未満で退職する傾向があります。その1-2年の中で、ハードワーキングなカルチャーで、スピード感のあるアウトプットを求められるビジネスアナリストとしての経験は、ビジネスアスリートとしての基礎体力をつけるという意味があると思います。

それより何より重要なのは、「数年で辞めるのが当たり前のカルチャー」という点です。いずれ辞めると考えていれば、常にビジネスチャンスに敏感になり、PayPalのようなホットスポットを見つけてジョインすることもしやすいわけです。

(日本でもネットバブルのときにコンサル→ベンチャーの流れが起きました。コンサルがブランド企業だったからというよりも、単に終身雇用カルチャーではなく流動性の意識が高い人材の集まりだったコンサルからベンチャーに人が流れたと考えるべきかと思います)

ちなみに、日本でも、DeNAの南場社長やケンコーコムの後藤社長など初職がコンサルの経営者が何名かいらっしゃいますが、当時の日本におけるコンサル業界は、まだ黎明期にあり、「コンサルなんて日本では流行らない」「銀行蹴ってマッキンゼーなんてバカじゃないか?」と言われた時代です。南場社長の頃のマッキンゼーに在籍していた人から聞いた話だと、当時は今と比べて本当に無名な会社で、ブランドも何もなかったし、学生の間では少なくとも無名だった。そんな中良く分からずに入ってきた変わり者の集まりだったということです。

(まさに今のスタートアップと同じような感じじゃありませんか)


◆でもやっぱり、スタートアップや新興企業が良い理由

また、残りのPayPalマフィアの初職がスタートアップや新興企業だったりするケースが多いのも、納得できます。伝統的な大企業に入って、マネジメントの階段をゆっくり登ろうというタイプは、30代・40代前半までに起業家や経営者・投資家として活躍するには、時間軸的には難しいのではないかと思います。

スタートアップや新興企業であれば、事業の成長に組織の成長が追いつかずにいつも人不足の状況が生まれ、一人当たりの裁量が大きくなり、常に能力的なストレッチを強いられます。20代半ばでマネジャーに就任し、20代後半で部下を数十名率いるなんて経験は、スタートアップや新興企業にいかないと得難い経験です。そうすることで、若くして経営人材になるためのハシゴを登っていけるのです。


◆以上踏まえて、初職が伝統的な大企業では起業や若き経営者を目指すには不利であることを言いたい

私は、将来起業家になろう、経営者を目指すという学生がいたときに、「だったら伝統的な大企業に入ってもあまり役に立つ経験はできない。むしろ起業家や若くして経営者になるという志から遠ざかってしまう可能性が高い。

理想はスタートアップに近いところで優秀な経営陣の近くで仕事をすること。もし、その縁がなかった場合には、コンサルファームとか短期でスピーディに成長できる終身雇用じゃない環境で修行してからベンチャーに移るのも悪くない選択じゃないか」と話しています。

そもそも、この一連のお話は、「若くして経営人材・起業家を目指す学生」向けに話をしているので、それ以外の学生の皆様には、ブランド大企業を初職として選択すると良いのでは?、というのが至極真っ当で、助言する側もされる側も、リスクの低い、安全パイなご意見かと思います。これについては異論なしです。


※余談ですが、だからこそ、スローガンでは、優秀な経営陣がいる選りすぐりのベンチャー企業とコンサルティングファームに特化して就職機会の提供をしています。巷の新卒紹介業態とよく一緒にされがちですが、業態としては、セミナー開催・マッチングの場の提供の要素が強いです。「金に糸目付けないブラック無名企業に人を紹介しているあこぎな商売しているな」とかいう完全に的外れなコメントが一部からあったのでその点、誤解なきようお願いします。


※ここまで力説しても、結局これってシリコンバレーの話であって、日本では事情は別でしょ、的な思考停止は是非やめていただきたい。上記のような現象が起こる根本ロジックは日本でも適用されると思います。

※何を書いても言っても、「ポジショントークだからさ」とか「でも、この伊藤って人ははじめにブランド企業入っているんでしょ?」とか本質じゃない思考停止もやめましょう。ポジショントークだからさ、という思考停止の罠については別エントリーでまとめます。


併せて読みたいおすすめ記事
今就職するなら、「受け皿型企業」じゃなくて、「踏み台型企業」がいいかも
(ロケスタ社長日記より)

理想的なスタートアップのキャリアパス
(スローガンを持って生きよう 過去記事)


yutaslogan at 20:13コメント(1)トラックバック(0)  この記事をクリップ!
気づきの言葉 | 人材発掘・育成

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1. Posted by hashimo   2012年01月25日 15:21
5 探していた情報が網羅されていてびっくり!!
ありがとうございます!!!

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Profile
伊藤 豊 スローガン株式会社 1977年11月に栃木県宇都宮市に生まれる。1996年私立開成高校卒業後、東京大学理科一類へ。文転し、文学部(行動文化学科心理学)卒業後、2000年に日本IBMに入社。システムエンジニア,関連会社にて新規ビジネス企画・プロダクトマネジャーを経て、本社のマーケティング部門にてプランニングワークに従事すると同時に、ベンチャー企業の設立に携わり、マーケティング、ウェブ系プロモーションを主に担当した後、スローガンを設立。現在に至る。 アントレプレナー型人材の輩出支援のベンチャーヒューマンキャピタルと新事業立ち上げをおこなうインキュベーションで新産業・新事業を創造する社会をつくります。 mail to : yuta(at mark)slogan.jp リンクはご自由にどうぞ。ただし、本ブログに記載されている内容は個人的な見解に基づくものであり、所属する組織の見解ではないことを予めご承知の上お読みください。 当社運営メディア Goodfind Facebook Twitter LinkedIn mixi
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